二人の距離~やさしい愛にふれて~
その日はみんなで大吾を思い、大吾の話をした。

夜も遅くなり、恭吾と茉莉が帰ると真はすでに帰っており笑顔で出迎える。

「おかえり。仲直りできた?」

「なんだよ、別に母さんと喧嘩してたわけじゃないよ。」

「フフッ、そうね。でも昌くんからも大吾の話を聞いたみたいで少し近づけた気がするって。」

茉莉の目が腫れていることに気づいたが真はあえて何も言わず腰に手を回すと大吾の写真の前に連れて行く。

「大吾、茉莉さんと籍を入れることにしたよ。いいよな?絶対幸せにする。恭吾のことも、全力で守るよ。」

「俺、そんな子供じゃないよ。守るって…。」

二人を後ろから見てた恭吾は小さく吹き出すと、照れたように言う。

「オヤジ、みんなからいろんなこと聞いたよ。マジで記憶なくてさ、でも大切にしてくれてたんだろうなってことはわかるよ。会ってみたかったし、話もしてみたかった…。でもその分まこちゃんがいてくれて、俺は幸せだよ。父親が3人もいるって最強だし。」

「写真の大吾と、今の恭吾、同じ顔で笑ってる。お前のことは忘れないよ。」

優しく微笑みながら真は恭吾の頭を撫でる。
その横で茉莉は大吾と過ごした日々を思い出し、絶えず目からは涙が流れ落ちる。

「…っ、大吾…。会いた、いよ…ごめっ、幸せになるね。」

「ははっ、母さん泣きすぎ。」

その日の夜、恭吾は父親と遊んでいる夢を見た。まだ自分は幼い子供で、父親の膝の上に座り積み木を積んでは顔を見上げると眩しい笑顔で見下ろされ『おぉ、すごいぞ、恭吾は天才だなぁ。』と褒められていた。
翌朝目が覚めた恭吾はそれがただの夢ではなく自分の幼い頃の記憶なのではと少し嬉しかった。
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