二人の距離~やさしい愛にふれて~
「バスかぁ、今日は久しぶりだしちょっと刺激が強すぎるんじゃない?まずは近場からどうかな?」

「え~、ケチ。本が読みたかったのになぁ。」

「へぇ、理花さん読書が好きなんだね。何を読むの?」

「現代ものの小説。ファンタジーとか歴史ものはよくわからなくなって進まなくなるから。恋愛ものもミステリーも青春ものも気になったら読んでたよ。」

「そうなんだね。じゃあ古本屋さんとかどうかな?この近くに古民家カフェと併設して古本屋さんができたんだ。そこのケーキが美味しいって看護師さんたち言ってたよ?」

理花は一瞬迷うが、無表情になると頭を振って自分の部屋へと帰った。

「えっ?理花さん?食べることにまだ抵抗があるのかな?」

草野は少し苦い顔をしてつぶやく。

「おっ?草野先生なんだって?」

病室に帰ると笑顔で恭吾が迎えてくれるが理花の表情は暗かった。

「まだバスに乗るのは早いって。」

「そっかぁ、じゃあそこらへんぶらぶらするか?昼ご飯は外で食べてもいいらしいし。」

「いい。もういい。」

理花は泣きそうな表情で頭まで布団をかぶる。

「理花?そんなに図書館が良かったのか?バスがだめならタクシーで行くか?」

「…いい。もういいの。」

「なんだよ。せっかくデートしたかったのに。な?俺に付き合ってよ。」

「・・・・・・・・」

理花は布団から出てこようとせずに頑なに潜っている。
恭吾はそんな理花を布団の上からつついてみるが反応がなく小さく頭を掻く。
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