二人の距離~やさしい愛にふれて~
恭吾と恵子は顔を見合わせて困っていると草野が部屋へ入ってくる。

「おっ、いじけ虫がいるな。理花さんはケーキはきらい?」

「ん?理花は甘いもの好きじゃなかったっけ?プリン好きって言ってたし。」

「えぇ、理花はスイーツ大好きだったわよね。先生、ケーキがどうされたんですか?」

「近くに古民家カフェができたからどうかなって提案してみたんですよ。」

「へぇ、そこなら歩いていけそうなんですか?」

「うん。10分くらいかな?隣の噴水公園を横切って行くといいかなって思ったんだけどね。」

恭吾は少し考え、布団に丸まった理花を思いっきり持ち上げた。

「きゃぁっ!」

理花は驚いて声を上げると足をバタバタと抵抗する。

「ハハッ、いじけ虫捕獲!観念して俺について来い!」

恭吾は暴れる理花をしっかりと抱きしめたまま嬉しそうにそう言うと見ていた二人も笑っている。

「もうっ、恭ちゃん、離して。」

「じゃあ一緒に行く?」

「行かない。だってお金ないもん。」

「クックっクッ、お前そんなこと心配してんの?そんくらい持ってるよ。」

「そうよ、理花が外に行くならママが出すわよ。」

「でも、でも私お金ばっかり使わせて…。恭ちゃんもここに来るだけでお金かかるってお兄ちゃん言ってたし…。これ以上お金使わせれない。」

理花は抵抗するのをやめるとうなだれるようにしてぼそぼそと胸の内を話す。

「そんなのいいんだよ。俺最近じゃ真面目にバイトしてるし全然遊んでないから小金持ちなんだぜ。まこちゃんだって今まで俺にお金かからなかったからって交通費少し出してくれてるし。」

「まこちゃん…。怒ってない?お母さんも。」
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