二人の距離~やさしい愛にふれて~
「あぁ、理花の回復を喜んでるよ。いつか会ってやってな。楽しみにしてるから。九州旅行もヨシの家族と計画立てようとしてたし。」

「あら?そうなの?それよりもまずこちらから恭吾君の家に挨拶に行かんといけんねってお父さんと話しとったんよ。」

「いや、そんな気にしなくていいですよ。そのうち本当に旅行がてらこっちに来ると思うし。」

「そんなわけにはいかんよ。このことはまた改めてお父さんと話してから伝えるね。」

恭吾は自分が来たくて来てるからこそ理花の両親に気を遣わせることが申し訳なかったのだ。

「じゃあ、話もまとまったところでカフェに行ってくる?ご飯食べてくるならお昼止めるけど?」

草野がニコニコと理花に向かって問いかけるが理花は布団をかぶったまま抱えられておりもがくばかりで返事ができなかった。

「うん、じゃあお昼はいらないって伝えておくね。じゃあ、芹沢くんは出る前にまたナースステーションに寄ってくれる?」

言いたいことだけ言うと草野は笑顔で部屋を出て行った。
恭吾は笑いながら理花をベッドに下ろすと、怒った理花の顔が布団から出てくる。

「もうっ!恭ちゃんが離してくれないからっ、先生行ったやん!」

恭吾はこんなに表情豊かな理花を見るのは初めてで怒った顔も愛おしいかった。

「ぷっ、ははっ、まぁ、いいじゃん、デートなっ?」

「そうよ、せっかくのお誘いなんだから行ってみたら?」

恵子も後ろで嬉しそうに二人を見ている。
あんな酷い事件は嘘で、前のような理花に戻ったんじゃないかと錯覚するほど理花は明るくなっていた。
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