二人の距離~やさしい愛にふれて~
「大人…なれるかな?」

「なれるさ。理花も、俺も。」

恭吾は立ち上がると理花の腕を引いてたちあがらせる。
そのままぐっと腕を引き、また理花を抱きしめると耳元で囁く。

「今めちゃくちゃキスしたいけどさすがにこの多い人の前でははずいからまた二人の時にしような。」

理花はそれを聞いて吹き出して笑った。

「あはは、さっきはしたのに、ふふふ、おあずけだね。私も、したいなぁ。」

それからは他愛のない話をしながらゆっくりとカフェへ向かった。
丁度公園を横切って脇道に入ると緑に囲まれた古い日本家屋が建っていた。
まるで別世界に迷い込んだような雰囲気に二人は思わず見入っていた。

「すごいな、映画に出てきそう。いきなり静かだし。」

「うん…、入って大丈夫かな?」

「大丈夫だろっ。どんなメニューがあるか楽しみだな。」

そう言うと恭吾は古民家の玄関へ行く。
横開きの玄関の横に小さな立て看板があり、日替わりランチのメニューが書かれてある。

「ランチってこんなに沢山出てくるのかな?」

自家製サラダ・かぼちゃとレーズンのヨーグルトサラダ・手ごねパン・ビーフシチュー・ミニケーキ(3種から選べます)・オリジナルコーヒー
と書かれてある。

「まぁ、食べれなければ俺が食べるし。入ってみよう。」

そう言うと理花の返事を待たずにドアを開ける。

「いらっしゃいませ。」

中に入るとコーヒーのいい匂いが漂っており、穏やかそうなエプロンを着た30代くらいの男性に笑顔で迎えられる。

「お好きな席にどうぞ。」

店内にはまだお昼には早く、カウンター席に白髪の男性2人がいるだけだった。
中は古さを生かし、でもちゃんとオシャレなカフェになっている。奥は一面窓になっており広い庭が広がっている。
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