二人の距離～やさしい愛にふれて～
恭吾と理花は窓際のテーブル席に座りメニューよりも先に庭を覗き込んだ。
庭というより小さめの畑のようになっておりいろんな野菜が育てられている。
畑の奥の方でコックコートを着た男性が地面に植わっている葉っぱを収穫していた。

「ランチのサラダに使用する葉物を収穫してるんですよ。」

先ほどの店員さんがお水を持って来てくれ、２人がずっと外を見ているので声をかけてくれた。

「へぇ、野菜も作ってるってすごいっすね。とりあえず外の看板に書いてあったらランチお願いします。理花はどうする？別の選ぶ？」

「う～ん、どうしよう…。お粥はないですよね？」

理花は恐る恐るその男性に話かける。
入院してから先生や看護師さん以外の他人と話をする事がなく、思った以上に緊張していたのだ。
そもそも、集団暴行されてからまともに誰かと会話をしてこなかった理花にとって初めて会う人との交流はすごく恐ろしいことでもあった。

「う～ん、お粥かぁ…ちょっとコックに聞いて来ますね。」

メニューにない物をお願いし、迷惑なはずなのに嫌な顔せず笑顔で対応してくれる。
店員さんは外のコックコートを着た男性の所へ行きしばらく話をすると、笑顔で戻ってきた。

「おまたせしましました。お粥もできますが雑炊風やリゾットとか、あと柔めに煮たご飯でドリアもできるそうですよ。中に入れるのもキノコ系、魚介系、チキンとお選びいただけますよ。」

まさかそんなに沢山のメニューを言われると思っておらず理花の頭は軽くパニックになっていた。

「少し考えていいですか？」

「えぇ、ごゆっくりどうぞ。」

そう言うとカウンターの中に戻って行った。
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