二人の距離~やさしい愛にふれて~
「飯は買ってやるけど酒は買わねー。何だよ急に。薬じゃ無かったらなに?二重人格?」

理花は恭吾の腕の中で頭を横に振った。
ほんの少しの間抱きしめられていた理花は力無く恭吾の胸を押し返した。

「お酒買ってくれないなら何もいらない。帰る。」

そう言って大通りへと歩き始めた。
その理花の腕を掴んだまま恭吾も一緒に歩き始める。

「今のお前じゃ危ねーから送る。」

「いい、一人で帰れる。」

「送る。」

断られても腕を離そうとはせず理花の横を歩き続けた。
30分程歩いた所にあるオートロック付きのマンションの3階に理花は住んでいるらしかった。

恭吾は理花がまともな家に住んでいることに驚きながらも部屋までついて行った。

「お前、パパ的なやつに囲われてるの?俺ここに来て大丈夫?」

恭吾は不安を口にしていた。

「ハハッ、パパ…まぁ、パパにお金出してもらってるけど…フフッ」

中に入ると1Rの広めの部屋に物が散乱していた。
棚は倒され、服も床に脱ぎ捨てられていた。

「お前…この部屋すごいな。洗濯とかしてないだろ?」

恭吾は呆れた顔で部屋を見渡す。

「洗濯はしてるよ。溜まったらボタン押せばいいだけだし。そう言えば恭ちゃんが初めてかも。男の人でパパ以外にこの部屋入ったの。もう友達もいないから訪ねてくる人なんていないけどね。」
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