二人の距離~やさしい愛にふれて~
それからは話が進むのが早かった。
誠一と恵子は1日でも早く会いに来たがったからだ。

土曜日の正午前、茉莉は家でそわそわしていた。
朝一で理花の両親が新幹線に乗りこちらへ向かったと連絡があり、真が恭吾と一緒に駅まで迎えに行っているのだ。

コーヒーメーカーをセットし、お菓子も用意した。
とりあえず家で挨拶をし、近くの料亭で昼食をとる予定だ。

「大吾、どうしよう…。理花さんのご両親に挨拶なんて。私たちが結婚するときもそんなことしたことなかったからどうしたらいいのかわからないの。」

茉莉は大吾の写真に話しかけるが、相変わらず大吾は写真の中で笑ってこちらを見てるだけだった。

「大吾…、一緒にこの日を迎えたかったな。」

茉莉の目には涙が浮かぶが、泣き顔で出迎えるわけにはいかないと必死でこらえた。
その時茉莉のスマホが鳴る。見ると恭吾からメッセージが届いていた。

『下に着いた。今から上がる。』

茉莉の心臓は速く打ち、胸が苦しくなる。
とりあえず深呼吸をしていると玄関が開く音がする。
慌てて玄関へ出迎えに向かった。

「こんにちは、芹沢茉莉、恭吾の母です。遠いところようこそいらっしゃいました。」

何度も練習した言葉を一息で言い終えると深々と頭を下げる。
そんな茉莉の姿を見て真は小さく笑った。

「はじめまして、長谷川誠一、理花の父です。こっちは妻の恵子です。お休みの日に押しかけて申し訳ありません。息子さんには大変お世話になっております。」

誠一と恵子も頭を下げる。

「さぁ、こんな所でなんですので中へどうぞ。茉莉さんも。」
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