二人の距離~やさしい愛にふれて~
二人をリビングのソファへ案内すると用意しておいたお菓子とコーヒーを出す。
最後に当たり前のように大吾の写真の前にもコーヒーを置くと茉莉は小さく息を吐く。

「もしかしてそちらが恭吾くんのお父さんですか?」

恵子が気づいて立ち上がる。

「えぇ、恭吾が3つの時に他界したんです。こんな日が来るなんて、主人が生きてたら心から喜んだと思います。」

「もし良かったらお線香を上げさせてください。」

誠一も写真の前に来ると辺りを見渡す。

「お線香は主人の実家にしか準備してないんです…。」

「顔だけ見てやって下さい。最近の恭吾にそっくりなんですよ。」

真は茉莉の横に来ると肩を抱いて言った。
誠一と恵子は写真に挨拶をし、恭吾も写真に向かって二人を紹介する。

そんな光景を見てまた茉莉の目には涙が浮かんでくる。

「さぁ、茉莉さんせっかく来ていただいたし。」

真は茉莉の背中を軽く押し、ソファのローテーブルの横へ連れて行く。

「お母さんたちも、コーヒーどうぞ。」

恭吾は少し照れながら恵子たちをソファへと促す。

「改めまして、息子さん、恭吾くんには本当にお世話になっております。」

5人、ローテーブルを囲むように座ると誠一が改めて挨拶をする。

「そんな、こちらこそ恭吾が大変お世話になって…お宅に泊めていただいたり、ご飯まで…。それと、先日はお醤油ありがとうございました。恭吾も気に入っていて、あっ、真さんも…」

茉莉は緊張しておりつい早口になってしまう。
恭吾からは真との関係を話しているとは聞いているが、やはり兄妹間でと良く思われていないのではなど気にもなっていた。
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