二人の距離~やさしい愛にふれて~
「いえ、気に入ってもらえて良かった。恭吾くんは本当に優しい子で…普通ならあんな大変な娘、見捨てられてもおかしくないのに…面倒をみてくれる…私たちにはとても大切な娘で…」

恵子は目に涙を浮かべて話す。

「恭吾がお二人に認めていただけて嬉しいです。この子の父親、大吾も喜んでると思います。」

真が笑顔で言うと誠一は恭吾と真の顔を交互に見る。

「恭吾くんから聞いてます。真さんか父親代わりだったこと、今度入籍されること。おめでとうございます。」

「はははっ、お恥ずかしい。そんなに籍にこだわっていた訳ではないんですがけじめとして。兄がと変に思われたでしょう。」

「そんなことありませんよ。恭吾くん見て素敵な家庭で育ったんだろうとわかります。今日もお二人を見て素敵な関係なんだと。だから変だなんて思いませんよ。」

誠一は穏やかな笑顔で答え、茉莉はその言葉に安心する。

「あのっ、ありがとうございます。息子のことを褒めていただけるのが本当にうれしいです。」

茉莉は頭を下げると、我慢していた涙が溢れだす。

「へへっ、俺もこんなにほめてもらえることないからうれしいっす。でも照れるしもういいよ。」

恭吾はどんな顔をしていいのかわからずコーヒーを一気に飲んだ。

「そろそろお昼時ですし、食事に出ましょうか?」

真が茉莉の背中を撫でながら言うと恭吾も喜んで立ち上がる。

「すみません、こちらがいろいろ準備しておくべきなのに甘えてしまって。」

「いえ、こちらのことは私たちの方が慣れてますし、近いうちに私たちも九州に伺わせてください。恭吾がもつ鍋が美味しかったって言ってて、是非私たちも食べたいねって言ってたんです。」

茉莉と恵子は車まで食べ物の話で盛り上がった。
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