二人の距離~やさしい愛にふれて~
「そっか、出かけるつもりだったんだ?どこ行くつもりだったんだ?」

頭をなで続けながら聞くと、嬉しそうな顔で理花が顔を上げる。

「今日はバスに乗って図書館に行くつもりだったんだけど、帰れるなら家に帰る。」

「あぁ、この前ダメって言われたところな、図書館から家って遠い?」

「ううん、歩いて20分くらいかな?ここからのほうが遠いかも。」

「そっか、じゃあ図書館行って家に帰ればいいな。」

恭吾の言葉に更に嬉しそうな顔になる。
今までで一番な程理花の表情がコロコロかわり、楽しそうだった。

「じゃあ図書館でおろそうか?」

陽斗からの提案を理花は断る。

「バス乗りたいし、天気がいいし、ゆっくり行きたいの。ダメ?」

上目遣いで陽斗にそう言うと、わざと困ったような顔をしため息をつく。

「そんな顔されたらダメとは言えんだろ。行ってこい。」

そんな兄妹の会話を恵子はクスクスと笑って聞いていた。
以前はいつも仲良く、明るい二人のやりとりをひさしぶりに見れて嬉しくてたまらなかった。

「理花、バスとかわかる?俺全くわかんねぇから連れてってな。」

スマホで地図アプリを開きながら恭吾が言う。
そのスマホを覗き込みながら理花はバス停の場所を説明していた。

恵子はそんなぴったりくっついてスマホを覗き込んでいる二人の写真をこっそり撮る。
このまま嫌なことは忘れてしまい、楽しく過ごせたらと心から願っていた。
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