二人の距離~やさしい愛にふれて~
外泊の準備はそれほどなく、持って帰るものを車に乗せると恵子と陽斗は先に家に帰った。

恭吾と理花は手を繋ぎ、確認したバス停へゆっくりと歩く。

「最近ちょこちょこ出かけてたんだって?」

「うん、あの本屋さんもまた行ったよ。あとは公園一周とか、1時間くらい散歩とか。」

「へぇ、お母さんと?」

「たまにお兄ちゃんが仕事サボって来たり、1回だけパパとも行ったかな…。でもね、パパって何もしゃべらんし…こんな娘は嫌だろうなって思うと苦しかった…。」

理花は話しながら恭吾と繋いだ手に力が入る。

「まぁ、もともとお父さんってしゃべるほうじゃないんじゃないか?」

「そうだけど…。」

「俺から見たお父さんは理花が可愛くてたまらないって感じだけどな。じゃなきゃ俺みたいなやつを毎回家に泊めたり、わざわざうちの実家に挨拶しに来てくれたりしないだろ。」

「……うん。」

「理花は愛されてるよ。自信持っていいと思うぞ。お父さんだけじゃなく、お母さんも陽斗さんからも…あとは俺からも。」

恭吾は最後少し照れなから言う。
そんな恭吾が可愛く、理花自身も恥ずかしくなり声を上げて笑った。

「なぁ、覚えてる?俺さお前の笑った顔可愛いって言ってたの。もっと見たいと思ったんだ、やっとそれが最近叶ってマジ嬉しいよ。」

「それって…初めて会った日じゃない?せっかく笑ったら気持ち悪がられたの。」

恭吾は当時の理花の顔を思い出し、声を上げて笑う。

「あれはひどかったしな。でもあれはあの時の理花には鎧のようなもんだったんだよな。」

「そんなかっこいいもんじゃないよ。…汚い。」
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