二人の距離~やさしい愛にふれて~
自分のことを汚いと思い込んでいる理花はそう言いながら眉間にシワを寄せる。
徐々に理花の呼吸が荒くなるのを感じた恭吾は自分に引き寄せぎゅっと抱きしめる。

「お前は汚くない。汚いもんは俺が洗い流しただろ?大丈夫だから。」

理花は恭吾にしがみつくと唸るように泣き始めた。
最近調子が良かったこともあり、久しぶりに気持ちが高ぶった理花を目の当たりにして少し狼狽えるが理花を離すことはしなかった。

「理花、辛かったら図書館はまた今度にする?病院に帰ってもいいし、家に帰ってもいいし。」

少しして声を上げることはなくなったが泣き止まない理花を抱きしめたまま恭吾は囁くようにたずねる。
理花は頭を横に振るり、目に涙をためたまま顔を上げる。

「恭ちゃんとずっと一緒にいる。二人でずっと…いたい…。」

「うん、一緒にいよう。俺もずっと一緒がいい。」

恭吾は理花の頭を優しく撫でるとおでこに軽くキスをする。
理花は照れながらも笑顔になる。

「よしっ!じゃあ図書館に行こう。バス停もうすぐだよな?」

「うん、そう言えばお兄ちゃんがプリペイドカードくれたの。バスの支払いができるやつ。」

「おぉ!ありがたい。バスって会社によってシステム違うからカードで払えるのはいいよな。」

すっかり涙も落ち着いた理花はまた恭吾の手を掴むとバス停へと向かった。
恭吾の優しさを感じ、自分に向ける笑顔を見ると高ぶった感情が不思議なほど落ち着いた。それどころか、温かい何かが胸いっぱいに溢れる感じがしていた。
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