二人の距離~やさしい愛にふれて~
二人は時間を忘れて本に夢中になっていると恭吾のお腹が鳴った。
図書館は人はそこそこ多かったが静かなのでお腹の音が目立った。

「フフフっ、恭ちゃんのお腹の音すごかったね。」

「真剣に読んでたらお昼過ぎてたんだな。」

恭吾がスマホの画面を覗くと13時を過ぎたところだった。

「本当だね。私は本借りて帰ろうと思うんだけど、恭ちゃんどうする?一緒に借りて家に帰って読む?私の本と一緒にお母さんが返してくれるよ。」

「たぶん大学にもあると思うからいいや。重たいし。でも結構これは参考になった。」

恭吾はもう一度表紙を眺めると元にあった場所へ返し、理花は本を借りると図書館を出る。

「図書館のなかって空調が効いてて過ごしやすいけど外に出ると蒸し暑いね。」

そろそろ梅雨入りかという時期で外は湿度が高めだった。
二人は手をつなぎお店が多くあるという駅方面へと向かった。

「私ここら辺にくるのも久しぶりだな。高校生の頃はよくここら辺に友達と来てたの。図書館行った帰りにどっかよって甘いもの食べたりして…。」

理花は淋しそうな表情で話をする。
あの頃は楽しかったし、何よりも自分自身が汚れてなかったのに…
そんな風に思い、また理花の目には涙が浮かんできた。

「理花、そんな顔しなくて大丈夫だよ。俺がそばにいるし、連絡したら友達だって会えるだろ?」

「うん、でも今は会いたくないかな…。」

「まぁ、今じゃなくてもこれからも会いたくなったら連絡すればいいだけだから。俺、理花の制服着た写真見せてもらった。ぽちゃぽちゃだったな。」

「もうっ!言わないで。甘いものはやめられなかったけど気にしてたんだから。」

恭吾が冗談交じりに話をしだすと理花も笑顔に戻る。
理花は以前よく行っていたお店に恭吾を連れて行きランチを食べた。
前回恭吾と外出した時から理花の食事量は徐々に増えており、サンドイッチを注文した。
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