二人の距離~やさしい愛にふれて~
「ここをまっすぐ行くとねよく行ってた雑貨屋さんがあるの。可愛い文房具とかあって買わなくても見て回ってた。」

「へぇ、行ってみるか。久々に行ったら楽しいだろうし。俺、理花の書いた字がみたい。多分だけど一回だけ見たことあるんだ。きれいな字書くだろ?」

倒されたままになっていた棚にあった本の中にぎっしり書かれたきれいな字を恭吾は覚えていた。
まさかあの時は理花が書いたものとは思っていなかった。

「そんなことないよ。普通だよ…。そうだよね。恭ちゃんの字は沢山見たけど私が書くことなんてなかったよね。私、恭ちゃんの汚い字好き。」

「なんだよ、汚くて悪かったな。周りからもよく言われるよ…。」

最後の方は小声になりながら拗ねたよう言う。
そんな姿が可愛くて理花は笑いながら恭吾の腕にじぶんの腕を絡める。

「あははっ、でも私は好きだよ。あの頃って今よりもっともっと息がしづらくてくらい中にいて…酔ってたのもあるけど、恭ちゃんだけが光だったの。今も、眩しすぎて怖かった。」

「怖いって?」

「照らされると汚い自分が丸見えで、そんな自分を見られたら嫌われるって…だから、そばにいるのも、離れて行かれるのも怖かった…。」

理花は絡めた腕に力を込める。

「何回も言うけど、汚くない。可愛いよ。離れてるうちに誰かから取られるんじゃないかって心配になるくらい。俺は今の理花しか知らないし、今の理花が好きなんだ。だから俺から離れて行かない。不安になったら何回でも言うからため込まずに俺に言って。」

恭吾は優しく笑うと理花の頭を撫でた。
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