二人の距離~やさしい愛にふれて~
しばらく泣き続けた理花は恭吾にもたれるように眠ってしまった。
少し困ったが理花を抱え上げると服が散乱しているベッドの上にとりあえず寝かせた。
何とか服を引っ張り出し理花を布団の中に潜り込ませるとビールで濡れた服などを拾い上げ洗濯機に突っ込んだ。

◇◇◇
理花は自宅のベッドで目を覚ました。
久しくベッドで寝ることをしてこなかった理花は驚き、必死で記憶をたどる。
でも理花の頭に浮かぶのは恭吾の顔と抱きしめられた感覚だった。

ハッ!

「恭ちゃん!」

この部屋に恭吾を招き入れたことを思い出し辺りを見回すが恭吾の姿は無かった。
それどころか、床に散らばっていた服も無くなっておりこの部屋に引っ越してきたときに買ったお気に入りのラグが目に入った。
最近では服が散乱しており、というより理花はラグが目に入らないようにわざと散らかしていたのだ。

テーブルの上にはペットボトルの水が3本とコンビニのおにぎりが2つ置かれていた。
理花はベッドから降りると水を1本手に取った。
テーブルにはレシートが裏返しに置いてあり、恭吾からのメッセージがかかれていた。

『学校あるから帰る。酒を飲まずに水を飲め。飯もちゃんと食べるように!何かあれば話聞くし、相談ものるよ。服は洗濯機の中』

メッセージと一緒にケータイ番号も書かれていた。
理花はそのレシートを眺めながら恭吾が書いた字を指でなぞった。

「フフッ、汚い字…」

理花は寂しく笑うと目からは涙がこぼれていた。
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