二人の距離~やさしい愛にふれて~
意味を恭吾に聞いてみるが恭吾には「まだ早いからそのうちな。」とだけ言われる。

一通り商店街を見て回り、二人はカフェに入る。

「時間が経つのは早いな。もう夕方だ。あっ、さっき陽斗さんから電話がかかってきてた。」

スマホを覗いた恭吾は陽人に電話をかける。
何時ごろ帰ってくるのかという内容だったが理花がもう少し帰りたくないというので少し遅くなると伝える。

「陽人さんたち心配してるんだ。久しぶりにバスに乗って出かけてるし。また今度来た時もどこか遊びに行こう。これからはきっともっと外に出れるようになるよ。」

「…うん。恭ちゃんともっと一緒にいたいのもあるけど…、どんな顔して家に帰っていいかわからん。こんな娘が帰ってきたってみんな気を遣って疲れるで困るよ。」

「それはないよ。それはないって俺が言える。理花が帰って困るんだったら俺なんか泊めるのもっと困るだろ。赤の他人だし。」

恭吾は少し怒った表情で真剣に理花に訴える。

「……そうなんだけど。でもなんだか帰りづらいし、どうしたって私がしてきたことも消えないし、されたことも…。」

「うん、そうだよな。だからこそ、俺も一緒に帰るし理花の家族も一緒にいるんだ。理花一人で背負う必要なんてないよ。俺だって理花に手を出したやつらの一人だし、共犯だろ?」

真っすぐに恭吾の顔を見つめる理花の目から涙がこぼれ落ちる。

「ふふっ、共犯って…。恭ちゃんが私にしたことと他の人が私にしたことは全然違う。優しすぎて怖かったけど、心は温かくてきっとあの瞬間は幸せだったと思う。」
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