二人の距離~やさしい愛にふれて~
「ははっ、幸せだったんだ。俺は怖いって泣いてたからいけないことしてる気分だった。」

恭吾は当時のことを思い出し、宙を見つめて笑った。

「いっつも困らせてたよね。ごめんね。」

「どちらかというと俺の方が独りよがりで困らせてると思ってた。…俺さ、理花が襲われて病院に運ばれたとき怖かったんだ。病院に行っても会わせてもらえないし、警察に呼ばれるし。早く大人になりたいって思った。それにまた理花に会いたいって思ってたけど連絡先もわからないし、今こうやって会えてデートまでさせてもらって、俺は今も幸せだよ。」

恭吾は困ったように笑うと目からは涙が流れた。
その涙を見て理花の目にも涙がこみ上げ溢れだす。理花は立ち上がると向かいに座っている恭吾の横に行き、抱きしめる。

「恭ちゃん、いっぱいいっぱいありがとう。幸せって思ってくれてありがとう。」

その言葉に恭吾は涙が止まらなくなり理花を座ったまま力いっぱい抱きしめる。
時間にして1~2分のことだったが、周囲の客から注目を集めていた。
我に返った恭吾はそれに気づき、恥ずかしくなり慌てて理花の手を握り急ぎ足でお店を出る。
その頃には二人の涙はすっかり止まっており、理花がクスクスと笑い出すから恭吾も歩きながら笑っていた。

「フフフっ、恭ちゃんありがとう、本当に…大好き。」

理花は手を引かれ、恭吾の後ろを追うようについて行きながら小さな声で
そう言うと恭吾は急にたちどまり振り向く。

「俺も、大好き。」

声に出すと急に恥ずかしくなり恭吾は顔を赤らめる。

「フフッ、うれしい。私こんななのに。」

「こんなってどんなだよ?めちゃくちゃ可愛いよ。」

「恭ちゃんといると不思議、嫌いな自分が少し好きになれる気がする。」

「おぉ、いいじゃん。もっと好きになれよ。そして、自分のこと許してやれよ。な?」
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