二人の距離~やさしい愛にふれて~
「あ~、…うん。今は、な。でも今の理花を見てるとそのうち何も干渉されなくなるよ。」

「そんな…。もう嫌…。恭ちゃんと帰りたい。」

理花は恭吾にしがみつくと恭吾と過ごしたマンションでの日々に戻りたいと思っていた。

「理花?大丈夫だから。理花は前に進めてるし、俺たちのことみんな認めてくれてるし、そう遠くない未来にもっと一緒にいられるようになるよ。それに今夜は面会時間とか関係なく一緒にいられるだろ?」

理花は恭吾の胸に顔をうずめたまま小さく頷く。
「ははっ」と恭吾は小さく笑うと理花の頭を撫でる。

「さあ、みんな待ってるよ。」

恭吾はまた理花の手を掴むと歩き出す。
すっかり日が沈み、あたりが徐々に暗くなってきたころ家にたどり着いた。

理花は玄関の前に立つと力いっぱい恭吾の手を握った。
家族とは病院で会ってはいるが家に帰ってくるのは被害に遭う前以来ですごく緊張していた。

「理花、これ。今朝お母さんから預かったんだ。」

恭吾がポケットから取り出したのは理花が以前使っていた家のカギだった。
少し震える手でカギを受け取るとそのままカギ穴に差し込む。
震えててなかなかうまく入らず、そんな理花を恭吾は優しく見守っていた。
ようやくカギを開けることができた理花は汗のにじむ手でドアを開ける。

玄関に入るとカギの開いた音を聞いた恵子が小走りでリビングから出てきた。

「理花、おかえり。」

笑顔で出迎えられ、理花の目からは一気に涙が溢れだした。

「たっ、だいま。」

恭吾はそんな理花の背中をゆっくり押すと理花は恵子に抱きついた。
恵子はまさか自分に抱きついてくれると思っておらずうれしくて力いっぱい理花を抱きしめ、涙を流す。
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