二人の距離~やさしい愛にふれて~
「遅くなってすみません。駅から歩いて帰ってきたんですよ。きっと理花の足はフラフラですよ。」

「恭吾君、今日はありがとう。さあ、中に入ろ。」

恵子は笑顔で言うと理花の背中を優しくさすってリビングへと連れて行く。
リビングでは夕食の準備がされていた。

「理花、おかえり。」

リビングにいた誠一も笑顔で理花を出迎える。
理花の涙は更に溢れだし、言葉が出なかった。誠一はそんな理花を見て困ったように笑うと肩を優しくなでる。
声を聞きつけて2階からおりてきた陽斗は泣いている理花を見て驚くが笑顔で「おかえり。」というと恭吾の隣に来て肩を小突いた。

「遅くなりました。」

「理花が帰りたくないって言ってたんだろ?付き合わせてわるかったな。」

「そんなことないっすよ。久しぶりというかまともにデートしたの初めてだったんで俺も楽しんでたら遅くなりました。」

「前も思ったけど都会の若いやつってみんなそうなん?恥ずかしいこと平気でいうけんこっちがはずいわ。」

陽斗は少し顔を赤らめていう。その横で恭吾は吹き出して笑っていた。

それからみんなで食事をした。
理花は食べれるようになったとはいえ、そんなに食べられず少しずつ口を付けた程度だった。
それでも食卓は明るく、みんな笑顔で食事をした。

「さあ、みんなお風呂沸いてるけん入ってね。」

食事が終わり恵子はみんなにそういうと食器を片付け始める。
理花は恵子と一緒に食器の片づけを手伝っていた。
二人の後姿を誠一は嬉しそうに眺める。その目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
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