二人の距離~やさしい愛にふれて~
リビングで恭吾と陽斗はテレビを眺めながら今日のことを話していた。
片づけを済ませた理花と恵子も戻ってくると理花は今日買ったものを広げて見せる。
楽しそうに話をする理花の姿に恵子も陽斗もうれしくて涙が出そうだった。
こんな日がこんなに早く戻ってくるとは思っておらず、恭吾に感謝してもしきれないくらいだった。

「さあ、次お風呂どうぞ。」

お風呂から上がってきた誠一は楽しそうに話している4人を見て自分も笑顔になる。

「俺は先にシャワーで済ませたから、恭吾か理花行って来いよ。」

陽斗がそう言うと理花は立ち上がり、恭吾の腕を持ち上げる。

「恭ちゃん行こう。」

そう言われて恭吾はびっくりする。周りのみんなも驚いた顔で理花を見た。

「あっ、間違えた…。」

理花は以前はよく恭吾と一緒にお風呂に入り、頭から足先まで洗ってもらっていた。それは性的な意味での接触ではなかったが恭吾は気まずかった。
慌てて手を離した理花は速足でリビングを出ていく。
残された恭吾はみんなの視線が痛かった。そんな恭吾の肩を陽斗は無言で殴った。

「痛いっすよ…。いや、あのっ、前のことで…変な意味じゃなくて…あいつほっとくと何日も風呂入らなかったし…。外から帰ってきたときは、あのっ…」

途中まで言って、家族の前で言うにはあまりにも衝撃的で受け入れがたいことだと気づき口をつぐむ。

「……恭吾君には本当に世話になったね。」

誠一はそんな恭吾を察する。陽斗も一瞬顔を歪めるも淋しく笑う。
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