二人の距離~やさしい愛にふれて~
「理花が嫌じゃなかったら私が一緒に入ってこようかしら。」

恵子はあえて明るくふるまうと、リビングから出ていく。

「俺はこっちに帰ってきてからの理花しかしらんけん。そうだよな。悪い。」

陽斗は眉間にしわを寄せて恭吾に謝る。

「いえ、確かに聞きたくないことを言いました。すいません。」

恭吾は頭を下げる。そんな恭吾の肩を誠一は持ち上げる。

「君が謝ることはないよ。感謝こそすれ、責めることなんて何もないよ。」

「そうだよな。今日があまりにも理花が前に戻ったみたいで勘違いした。」

「もうやめましょう、せっかく理花が勇気だして帰ってきたんですよ。この家に帰ってきても迷惑しかかけないって思いこんでて…。俺にとっては最近の明るい理花は初めて見る理花で…。正直、可愛くてたまらないです。」

最後は冗談交じりに言う恭吾に陽斗は笑顔で軽く肩を殴る。

「お前は…、もっと恥じらいを持ってよ。イチャイチャ、デレデレと。」

「いやいや、それでいいよ。若い頃しかできないだろ?」

誠一も楽しそうに笑って言う。

「そうでもないっすよ。うちなんて息子の前でまこちゃんと母さんはイチャイチャしてますし、それ見て育ったんで。」

「はははっ、確かに仲の良さそうなお二人だったよ。」

「へぇ、俺も会いたかったけどさすがに理花抜きなのに俺まで行くわけにいかんけんね。」

「そうだ、まこちゃんと、俺の幼馴染のヨシも陽斗さんに会いたがってましたよ。って言ってもヨシはもつ鍋狙いなだけですけどね。」

陽斗にもつ鍋を食べに連れて行ってもらった話をしている時の由彰の顔を思い出す。
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