二人の距離~やさしい愛にふれて~
「理花、それは違うよ。そんな理由じゃない。みんな理花の心の傷がまた開かないか心配してるだけなんだ。言っただろ?みんな理花のこと好きだから。」

「もう嫌、何もかも嫌。消えていなくなりたい。こんなっ…」

理花は恭吾にしがみつく。

「理花が消えたら俺はどうするんだよ。淋しいだろ?耐えられないよ。」

恭吾は興奮して泣いている理花の耳元でささやく。
理花は顔を上げ恭吾を見る。顔は険しく、眉間にしわが寄ったまま目からは涙が絶えず流れ出ている。

「でも、でも…。」

「うん、辛いよな。泣いてもいいんだ。でもそばにいてくれよ。な?」

優しく見下ろす恭吾の顔を見ると理花の表情は緩み、小さく頷く。

「うん、そうよ。せっかく恭吾君きてくれてるのにおかしいわよね。今日は理花の部屋で寝てもらいましょう。」

恵子は目に涙を浮かべ、必死に笑顔を作るとそう言って2階へ上がっていく。
陽斗の部屋に準備しておいた布団を理花の部屋へ移動しに行ったのだ。

自分が望む理花の姿しか見えておらず順調だと思っていた陽斗は、戸惑いを隠せず、理花に声がかけられなかった。

布団を準備しなおした恵子がリビングに入ってくる。

「さあ、お布団用意しておいたけん。」

「ありがとうございます。理花?どうする?もう寝るか?」

恭吾の問いに理花は頷く。

「じゃあ、薬飲まないとだろ?」

理花は顔を上げず頭を横に振る。

「夜は睡眠薬だけらしいけん、眠れそうなら飲まなくてもいいって先生がおっしゃってたよ。」

「そうなんですね。じゃあとりあえず飲まなくてもいいっすね。」

恭吾はあえて明るく言うと、陽斗に軽く頭を下げ理花を連れて2階へあがった。
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