二人の距離~やさしい愛にふれて~
恭吾は理花の言葉に絶望し、その場に座り込む。
いつの間にか後ろには陽斗がおり、しゃがみこんで恭吾の肩に手を置く。

「恭吾、悪いけど、今日のところは引いてくれないか?理花にはこれ以上辛い思いをさせたくないんだ…。」

恭吾はその言葉に自分が今ここにいることさえ迷惑なんだと気づき、胸が締めつけられるように痛んだ。
何も言葉を発さないまま恭吾はゆっくり立ち上がり1階へと下りる。

「俺、帰ります。」

リビングに行くと誠一と恵子に一言いい、置いていた荷物を持つと出て行く。
慌てて誠一が後を追う。

「恭吾君、もう遅いから泊まっていかんね。」

「いえ、俺、この家にいたらダメだと思うんで…。電車まだあると思うし、大丈夫っす。」

必死に笑顔になるも目からは耐えきれず涙がこぼれ落ちる。
泣いていることを見られた気まずさで逃げるように走って理花の家を後にした。

20時前、駅に着くととりあえずすぐに乗れそうな新幹線に乗り込んだ。
車内はそこそこ人が多かったが、運良く窓側の席に座ることが出来た。
窓の外は薄暗く、家や街灯の灯りが流れるように過ぎていくのを眺めながら目からは涙が絶えず流れ出る。

理花との思い出を回想しながら窓の外を眺めていると、隣の男性から肩を小突かれる。

「君、さっきから電話なってるだろ?せめてマナーモードにしなさい。」

厳しい顔で注意を受け、初めて自分のスマホが鳴っていることに気づく。

「あっ、すいません。」

恭吾は慌てて拒否をすると、マナーモードにする。
着信履歴を見ると誠一や陽斗から何度か着信があり、真からの着信も2件あり、先ほど拒否した着信も真からだった。
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