二人の距離~やさしい愛にふれて~
恭吾は誰に対する罪悪感かわからない感情でいっぱいで言葉が出なかった。
まりあとキスをしながら頭の中は理花のことでいっぱいだった。そして、無理に笑っているまりあが実は泣いていることにも気がついていた。

服を整えた恭吾はキッチンで何か作り始めたまりあの後ろへ行き抱きしめる。
まさか抱きしめられると思ってなかったまりあはビクッと体をふるわせ、その瞬間一気に涙が流れ出た。

「ごめん、今は俺自身受け入れきれないことばっかで…無理なんだ。」

「…っうん、わかった。待っててもいい?恭吾の隣にいたい…。」

胸の前に回された恭吾の腕をぎゅっと抱きしめる。

「約束はできない…。今はこれからのこと想像もできねぇし、お前のこと利用してるだけになるかも…。」

「今はいいよ。利用して、私に出来ることは何だってする。そばに居させて欲しい。」

「…うん。わかった。」

涙を流しながら振り向くまりあに軽いキスをする。
恭吾はまりあを抱きしめながら、頭のどこかで理花と比べていた。肉付きの良いまりあは触っても骨しか触れない理花とはまるで違った。
理花と出会う前は恭吾もまりあのようなさわり心地の良い女性が好みだったのだ。

「お前は柔らかいな。」

耳元で呟いた恭吾の言葉にまりあは静かに傷つく。誰かと比べられてることがわかったのだ。

「それって褒め言葉?遠まわしに太ってるって言ってる?」

まりあはあえて冗談っぽく返すと、恭吾は小さく笑っていた。

その日はまりあの手料理を食べ、DVDを見て、一つのベッドでただ一緒に眠った。
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