二人の距離~やさしい愛にふれて~
まりあと過ごすうちに秋が過ぎ、雪が降り始め、クリスマスが来ようとしていた。

「ねぇ恭吾、クリスマスどうしようか?」

「俺はたぶんバイト。イベントの時忙しいんだよ。」

「えっ?じゃ、じゃあ前の日は?恭吾誕生日だし。」

「あ~、23日は親たちと毎年ご飯行ってるんだ…、悪い。」

「誕生日に?な、仲良しなんだね…。」

まりあは動揺を悟られないよう明るく振る舞う。

「あぁ、誕生日ってのは口実で集まりたいだけなんだよ。」

「へ、へぇ、集まるってご両親だけじゃないんだね。それじゃあ断れないよね…。」

恭吾は父親のことはもちろん、真のことも何もまりあには話していなかった。
そして親たちの中に由彰の両親が含まれることも話さなかった。

その日は課題が終わっておらず恭吾は家に帰った。
帰る途中、自宅の最寄り駅に着き改札を通り過ぎようとしたとき、思いがけない人物とすれ違う。

「草野先生?」

咄嗟に振り返り呼び止め、草野も驚いた表情で振り返る。

「えっ?あぁ、そっか、ここら辺に住んでるんだったね。久しぶり、こんな所で会えるなんて偶然だね。」

相変わらず草野は穏やかに笑っていた。

「お久しぶりっす。……あの…。」

「理花さん?個人情報はいくら君でも話せないけど、元気にやってるよ。良かったら少し話せないかな?芹沢君のことは気になってたんだ。」

「あ、はい。少しなら大丈夫っす。」

二人は駅にあるカフェに寄った。

「まさかこんなことになるなんて思ってなかったから、君のフォローが出来ないまま申し訳なかった。理花さんのご両親もずっと君のこと気にしてたんだよ。」

「ははっ、俺、あれだけ特別に受け入れられてたから心のどこかで思い上がってたんです…。まさか邪魔者だってことにも気づかずに…。」

恭吾は寂しく笑うと俯く。
< 187 / 226 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop