二人の距離~やさしい愛にふれて~
「邪魔者か…、本当にそうだったかな?心に傷を負ってしまった人たちが少しずつ回復するだろ?そうすると今までなかった気力が蘇ってくるんだ、その中に自殺する気力とか、悪い方向への気力もね。」

「えっ?理花…自殺を?」

「あぁ、これは例えで理花さんのことではないよ。彼女は身体的にはとても元気だよ。」

「身体的には…。」

「アハハ、まぁ、元気ってことで。現在理花さんに関わっていない君に詳しく話をする事は出来ないからね。」

「…はい。」

「でもね、芹沢君は邪魔者なんかじゃなくて理花さんの救世主だと僕は思ってるけどね。君がしたことは理花さんの邪魔じゃない。それだけは忘れないで。辛いときは紙に書くなり信頼できる誰かに話すなりして溜め込まないように。それじゃ、僕はまだこれから移動しないといけなくて、偶然だけど会えて良かった。」

草野は立ち上がり、恭吾の肩をポンっと叩くと爽やかに立ち去った。
恭吾の目からは涙が流れる。自分でもまさかまだ泣くとは思っていなかった。

しばらく俯いたまま久しぶりに理花と楽しく過ごした日々を思い出す。
今でも鮮明に理花の笑顔が頭に浮かんだ。

「くそっ、どんだけ重傷なんだよ…。」

恭吾は勢いよく立ち上がると店を出てコンビニへ向かった。
沢山ビールやつまみになるものを買い込み、由彰の家におしかける。

「こんな時間にどうした?」

インターホンを押すと昌が迎え入れてくれた。

「俺、話したくて…。ビール買ってきた。」

「おぉ、そうか。由彰はさっき寝るって部屋にいったぞ?連絡したか?」

目の前に差し出されたコンビニの袋を受け取りながら昌は2階を見上げる。

「してない…。」

「あら?恭吾じゃん、どうしたの?」

リビングに入るとソファでくつろいでいた由実が驚いて駆け寄ってくる。
恭吾の目からはまた涙が流れ出ていた。
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