二人の距離~やさしい愛にふれて~
「今日、母さん夜勤で、まこちゃんも付き合いでいないって言うし、でも今すぐ誰かに話したかったんだ…。」

「そっか、よく来たね。泣き顔はお父さんそっくりだけど一人で溜め込むところはお母さんにそっくり。辛いときは周りにもっと頼っていいんだからね。」

由実は優しく笑うと恭吾の頭を撫でる。
昌は2階に由彰を呼びに行っており二人で下りてくる。

「お前まりあちゃんとこ行くって言ってなかった?」

由彰はリビングに入ってくるなり恭吾の背中に向かって言う。
振り返った恭吾は泣いており、びっくりするが困った顔で「仕方ないな。」と呟く。

「そうそう、そのまりあちゃんってのを連れて来いよ。」

昌が言うが恭吾は頭を横に振る。

「あいつとはそんなんじゃないし、やっぱりこのままずるずると付き合っても無理と思う…。」

「それをまりあちゃんに言ってやったのか?」

由彰の問いに恭吾はまた頭を横に振る。

「恭吾のこと真剣に好きでいてくれてるならなおさらはっきりと言ってあげないと。相手が可哀想だから。」

由実は恭吾の背中をさすりながらなだめるように言う。
それから四人でビールを飲んだ。
恭吾はまず駅で草野に会った話をした。それからやっぱり理花のことが忘れられないことや、自分が理花にしてきたことは間違いだったんじゃないかと思っていることなど話した。

「でもあっちの先生が違うって言うならそうなんじゃねぇの?あっちの対応は気にくわねぇけど謝ってたみたいだし、お前が悩むことじゃないと思う。まぁ、理花はお前にとって初恋みたいなもんだし、ふられたのを引きずるのはしかたねぇよ。」

珍しく由彰がよく話していた。
実は由彰もこんな恭吾を初めて見るから心配していたのだ。まりあがそばにいることで気が紛れたらと思っていたがそんなに上手くはいかないのだと落胆する。
< 189 / 226 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop