二人の距離~やさしい愛にふれて~
「そうだなぁ、失恋って辛いし、自分の存在さえ否定しがちだけど…本当にこればっかりは時間の問題かなぁ。」

由実がしみじみと言うから昌は横で笑っていた。

「そうそう、1年だったか?由実も引きずってたって言ってたよな。」

「昌がそんな昔のこと覚えてるなんてびっくり!」

「そりゃ忘れられないだろ、あの日のことは。こいつさぁ、バレンタインに…」

昌はあえて明るく自分たちの馴れ初めを話し出した。

自分の話を聞いてもらい、共感してもらえて少しすっきりした恭吾はそのまま由彰の家に泊まり、翌日二日酔いの頭を抱えてなんとか課題を終わらせ提出した。

それからまりあにも自分の気持ちを改めて伝えた。初めは泣きながら縋ってきたまりあも泣き止む頃にはすっきりしたのか笑顔で「わかった。」と言っていた。

「今までありがとな。まりあのそばにいて救われてた部分があると思う。」

「こんなときに名前呼ばないでよ。いっつもお前ってしか言わなかったくせに…。じゃあこれからは友達で、って特別なことは何もしてなかったけどね。」

「お前には我慢ばっかりさせて悪かった。今度は好きになってくれるやつと付き合えよ。」

「そんなことなかったよ。私もごり押しで付き合ってもらってたんだし、楽しかった。優しい恭吾もレアだったし。」

まりあは最後まで笑顔を崩さず別れた。
きっとこの後泣くんだろうと思うと恭吾の心は痛かった。

それからはあっという間にクリスマスが過ぎ、年を越し、理花と初めて会って1年が過ぎる。
あの日もかなり寒かったのに理花は薄いワンピースに薄いコートしか着てなかったなと思い出す。

「あ~あ、会いてぇな。」

そう呟いた息は白く染まった。
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