二人の距離～やさしい愛にふれて～
「俺、何してんだろうなぁ…」

恭吾は俯いてぼやいたまま動く気がせずにしばらくその場に座っていた。
ぼんやりと理花との思い出をたどっているうちに少しずつ辺りが暗くなっていく。

ふと、こちらに近づく足音に気づき顔を上げた恭吾は思わず立ち上がる。

「理…花？」

恭吾の目に写った人は理花の面影はあるも自分が知っている理花よりも肉付きが良く、肩の高さ辺りまで切りそろえた髪は柔らかなパーマがかかっていた。うっすらと化粧をした頬はほんのりピンクに色づき思わず見とれてしまうほど可愛いかった。

理花もマンションに近づくにつれ、目の前に立っている人物が恭吾だと気づき、ゆっくりと進めていた足を止めた。

「こんなところで何してるんだよ？」

ほんの一瞬、時が止まったように見つめ合ったあと恭吾が口を開いた。

会えることを諦めていた理花は、まさかここで恭吾に会うとは思わず困惑していた。
そんな理花の方へ恭吾が近づくと、理花は踵を返し走り出す。

「あっ！おいっ、待てよ。」

漸く体力がつき始めた理花が逃げ切れるはずもなく全力で追いかけてきた恭吾に呆気なく捕まった。

「来ちゃダメ…触らないで…」

消え入りそうに弱々しく理花は言うが本気で抵抗はしていなかった。

「はぁ～、いなくなったって聞いて本気で心配したんだぞ。向こうでもみんな心配してる。」

そう言いながら恭吾はスマホを取り出した。
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