二人の距離~やさしい愛にふれて~
「……そんな、私…手土産もなにもないし…行けない。」

「そんなのいらねぇよ。ちょっと戻ったとこにあるケーキ屋のケーキ好きだから買っていけば喜ぶよ。ちょっと待ってて。」

そう言うと恭吾は茉莉に『じゃあ親子丼。理花連れて行くから理花の分も頼む。今日家に泊めて明日あっちに送っていく予定。今度ちゃんと説明するから今日はそっとしといて下さい。』とメールを返信すると来た道を少しもどりケーキ屋へ寄った。

理花は戸惑いながらも恭吾がしっかりと手を握って離さず引っ張るからされるがままに着いて行く。二人の間に会話はほとんどなかった。

やはり恭吾の母親に会うとなると緊張し、マンションの前に着くと無意識に恭吾の手を力いっぱい握っていた。

「そんなに固くならなくても母さんもまこちゃんも大丈夫だよ。」

「でも…私なんかが……それに恭ちゃんにひどいことしたし…」

「ひどいことした自覚あるんだな。まぁ、それは夜話そう。とりあえずご飯食べよう。」

優しく笑うと恭吾は理花を引っ張って中に入った。
茉莉も帰って来たばかりのようで買い物袋から品物を取り出していた。

「おかえりなさい。理花さんははじめましてね。恭吾の母です。いらっしゃい。」

茉莉は理花の前に行き優しく微笑むと右手を差し出す。
理花は反射的に自分も右手を出し握手を交わす。

「あ、あの…長谷川理花です。あの…突然すみません。」
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