二人の距離~やさしい愛にふれて~
近づく
その日の夜、親に付き合って少しお酒を飲んだ後恭吾は理花の部屋を訪ねていた。
オートロックのモニターの部屋番号を押すも反応がなかった。

「アイツ…また男漁りに行ったのか?」

やっぱり親の誘いを断って早めに来れば良かったと思いマンション前の花壇に腰を下ろした。
帰ってくる保証はない人を待つつもりは無かったが何となく足が動かなかったのだ。

ため息をつくと息は白くなった。
ふと見上げた空は澄んでおり、意外にも沢山の星が見えた。

そのまま1時間程はそうしていたが寒さで震え始め、帰ろうと立ち上がる。
大通りへと歩き始めたとき、薄暗い道を前方から歩いてくる人影が見えた。
その人影はフラフラと頼りない足どりでこちらに向かって来ていた。

「……理花?」

恭吾が名前を呼んでみるとその人影は顔を上げてこちらを見た。
髪はボサボサで、こんなに寒いのに上着も着ずにミニスカートのワンピースだけだった。

恭吾が駆け寄ると昨夜と同じ不気味な化粧をして薄気味悪く笑う理花だった。
近寄るとすぐに解るほどにアルコールの臭いがプンプンしていた。

「お前…なんて格好してるんだよ。レイプでもされたみたいだぞ。」

近くで見ると胸元もはだけたままだった。

「やっぱり、恭ちゃんだ!ヘヘヘッ、レイプされちゃった。」

やはり薄気味悪い笑顔でそういう理花の言葉が本当なのか冗談なのか判断が付かなかった。
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