二人の距離~やさしい愛にふれて~
茉莉は淋しそうに笑いながら写真の中の大吾を指でなぞった。

「あっ、じゃああの写真も。」

先ほど紅茶をあげて話しかけていた写真を見た。

「えっ?あぁ、そうそうあれも恭吾のお父さんよ。恭吾が3歳のころに事故でね…。」

「恭ちゃんから聞いたことがあります。あっ、私、ケーキ4つしか買ってきてない…。」

「ふふっ、いいのよ。甘いものが苦手なの。」

理花は立ち上がると大吾の写真の前に行き、頭を下げて挨拶をしていた。

「ありがとう理花さん、きっと彼も照れながら挨拶してると思うわ。」

ふわっといい匂いが漂ってきて二人がキッチンの方を見るとコーヒーを持って恭吾が出てきていた。

「あっ、4つしかいれてないよ?」

「フフッ、理花さんんと同じこと言ってる。」

そう言って茉莉と理花は二人で笑った。

「大吾のはこっちに作ってあるよ。」

あとから真がケーキを乗せたお盆を持って出てきた。そのお盆の上には小さめのマグカップとお皿に小さく切られたケーキが乗せられていた。

「あら、ありがとう。」

そう言って茉莉はお盆の上から大吾の分を取ると写真の前に置く。

「理花さんからいただいたのよ。恭吾がこんな可愛い子を連れてくるなんてね。」

真はお盆をテーブルの上に置くと茉莉の横に行きそっと肩を抱く。

「はいはい、理花もいるし、子供の前でイチャイチャしてないではやくケーキ!」

恭吾は呆れた顔をしてそう言い放つと理花を見て笑った。

その日はケーキを食べると恭吾と理花は同じ階に借りている真の部屋に移った。
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