二人の距離~やさしい愛にふれて~
「…っうぅ……きょっ、ちゃんに、幸せに…なってほしっ…」

「俺はどうやったら幸せになれるんだよ?理花がそばにいないのにっ」

恭吾は頭を抱えながら半ば叫ぶように言う。
そんな恭吾に理花は手を伸ばし、恐る恐る洋服の裾を握る。
驚いて顔を上げた恭吾はようやく泣いている理花と目が合う。

「ふっ、なんだよっ」

目が合った理花はやっぱりたまらなく可愛くて思わず笑うと腕を引き寄せゆっくりと抱きしめた。
恭吾が力いっぱい抱きしめると、理花も必死でしがみつく。

「恭ちゃっ、ごめんね、会いに来てごめんね、好きなの、うぅっ、忘れられなくてごめん…」

「バカだな、嬉しいよ。会いに来てくれてありがとう、好きでいてくれてありがとう、忘れないでいてくれてありがとう。」

恭吾は優しくゆっくり理花の耳元で囁く。
理花は恭吾の胸の中で泣きながら久しぶりに感じる体温や匂いにすごく満たされた気持ちになりいつの間にか眠ってしまっていた。

今朝、家を出たときから理花は緊張していたのだ。
一目見ようと決心して駅に行ったのになかなか足が動かずにホームで2回電車を見送った…。やっと乗り込んだ電車の中では動悸が治まらなかった。
新幹線に乗り換えてからもずっとじわっと溢れる汗を感じながら手を握りしめていた。
やっとの思いで降り立った駅で初めてどこに行ったらいいのかわからないことに気が付き、恭吾との思い出をたどってさまよい、諦めかけたとき突然、目の前に恭吾が現れてまたずっと動悸が治まらなかったのだ。
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