二人の距離~やさしい愛にふれて~
驚いているとキッチンから茉莉が顔を出す。

「おはよう。お邪魔かなと思ったんだけどそろそろ私も仕事に行かないといけなかったからご飯だけもってきたの。」

茉莉は言い訳のように早口で言う。

「おはようございます。もうこんな時間、すみません、こんな、寝坊しちゃって…。」

「ううん、いいのよ。理花さん、昨日は疲れたでしょう?私たちは会えてうれしかったけど、理花さんは緊張しちゃうわよね。」

「いえ、そんなこと…。」

「フフッ、いいのよ。卵とね、ベーコン焼いたの。あと、パン置いておくから食べてね。」

「ありがとうございます。」

「もしよかったらだけど、また遊びに来てね。じゃあ、気を付けて帰って。恭吾に会いに来てくれてありがとう。」

茉莉は理花の肩をポンッと叩くと玄関に向かう。

「あのっ、こちらこそ、優しく迎えてくださってありがとうございました。また、いつになるかわかりませんが遊びに来させてください。」

理花は茉莉に深々と頭を下げる。

茉莉は「待ってるね。」と言うと帰って行った。
理花はドアが閉まった後もしばらく玄関を見つめていた。

緊張したけどすごく優しいお母さんで良かったと昨日茉莉と一緒にご飯を作ったり、恭吾の写真を見たことを思い出す。

「フフッ」

恭吾の小さな頃の写真を思い出し小さく笑いながら振り返ると寝室の入り口に恭吾が壁にもたれて立っていた。
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