二人の距離~やさしい愛にふれて~
「ヨシ?」

インターホンのモニターを見て恭吾はそうつぶやくと急いで玄関へ行く。

「どうした?」

「理花いるんだって?」

無表情のまま由彰は恭吾を押しのけるように中に入ってくる。

「どうしたんだよ?」

恭吾は由彰が怒っているように見え、慌てて後を追う。

「お前、今更何しにきたんだよ?」

由彰は理花の前に行くと低い声で言う。

「…っあ、あの、…ごめんなさい。」

理花はどうしてよいかわからず俯く。

「何しに来たって聞いてんだよ。また恭吾のこともて遊ぶつもりなのか?」

「ちがっ、そんなこと…。」

由彰の言葉に咄嗟に顔を上げ否定するも、以前自分がした行動のことを言われているんだと思い何も言えなかった。

「おい、何してるんだよ。理花を責めるなよ。こいつは悪くないよ。」

いらだちを隠せない由彰は恭吾の胸倉をつかむ。

「もう忘れたのか?あの時お前がどんだけ落ち込んでたか、やっとだろ?」

「ヨシには感謝してるよ。でもやっぱり俺、理花のそばにいたいんだ。」

由彰は真剣な恭吾の目を見て、掴んでいる手の力を抜く。

「次はないぞ。次、こいつのこと捨てたら俺は理花、お前のことを許さないからな。」

理花は目に涙を溜めて頷く。

「ふはははっ、やっぱヨシ、俺のこと大好きだな。」

「ふっ、言ってろ。」

由彰の表情が緩む。

「あのっ、本当にごめんなさい…。」

理花は由彰に頭を下げると目からは涙が溢れだした。
由彰は理花の頭をぐしゃっと撫でると、「よかったな」と恭吾の肩を軽く殴る。

「ヨシ、飯食った?俺ら今からだけど一緒にどう?」

「もう食ったからいい。そもそも俺、邪魔じゃん。帰るよ。」

「ははははっ、お前でも遠慮できるんだな。」

「お前よりできるよ。じゃあな。」

片手をあげると由彰は帰って行く。恭吾は決して今のは由彰の意地悪ではなく自分を心配してのことだとわかっており、そんな由彰の優しさがうれしかった。
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