二人の距離~やさしい愛にふれて~
「お前ら、なんでそっちからきたと?」

驚いた表情をしていた陽斗はみるみる怒りのこもった表情へと変わっていく。

「あっ、あの、電話気づかずにすみまっ」

恭吾は言い終わらないうちに左頬に強い痛みが走る。陽斗から殴られたのだ。

「やっ、やめてよ!お兄ちゃん!」

後ろに倒れ込んだ恭吾をかばうように抱きつき、陽斗を睨みつけたまま理花は叫んだ。

「手、出すなっていったやろ?」

陽斗はひどく怒っており、理花の言葉が耳に入っていなかった。

「俺…、悪いことしたとは思ってません。理花のことは大切にします。でも、もう我慢もしません。」

「お前!」

陽斗はひどく激昂し、理花を押しのけると恭吾の胸倉を掴みまた拳を振り上げる。
慌てた理花はその腕にしがみつく。

「やめて!恭ちゃんは何も悪くない!私がお願いしたの。怖くてたまらなかったから…」

「理花…なんで…。」

陽斗は脱力し、座り込んだ。

「普通のことでしょ?お兄ちゃんだって彼女が出来たら普通にする事じゃないの?私が頭おかしいからダメなの?」

理花は泣きながら陽斗に訴える。

「そんな事ない、理花はおかしくない。」

恭吾は理花の背中に手を当て言う。

三人は駅の中におり、通行人から注目を浴びていた。
陽斗はようやく我に返ると立ち上がる。

「とりあえず、そこのロータリーに車回すけん、そこで待っとって。」

そう言うと陽斗は足早に駅の中に入って行った。

「恭ちゃん、ごめんね、お兄ちゃんがあんな事…。」

「気にするな、信頼を裏切ったのは俺だし。」

恭吾は立ち上がり理花の手を引いて陽斗から指定されたロータリーに行く。
間もなくして陽斗の車がロータリーに入って来る。

「さぁ、乗って。」

恭吾は後部座席のドアを開けると理花だけを乗せた。
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