二人の距離~やさしい愛にふれて~
「えっ?きょっ、恭ちゃんは?」

理花は恭吾が一緒に行く気がないことに気づき、震える手で必死に恭吾の服を掴む。

「また改めて挨拶に行くよ。大丈夫、もう離れないって約束したろ?」

寂しそうに笑う恭吾の顔を見て理花の目からは涙が流れる。

「私、恭ちゃんと一緒に行く。もう離れないって言ったから…。」

震える理花の腕を優しく掴むと恭吾は首を横に振る。

「お母さんたち心配してるだろ?」

「恭吾も乗り。」

運転席から振り返ることなく陽斗が言う。

「母さんたちには今日のことは黙っとくけん。恭吾が一緒に帰らんかったら変に思うやろ?」

「でも…。」

「いいけん!早よ。」

陽斗は振り返ると半ば叫ぶように言う。

「わかりました。」

恭吾は複雑な心境で理花の隣に乗り込む。
駅からは10分程で理花の家に着いた。車を駐車場に停めている音で気づいた恵子が急いで出てきた。

「理花…、もうっ、心配したんよ。」

目に涙をためた恵子が理花を抱きしめる。

「ごめんなさい…、私…。」

「いいんよ。恭吾くんも、あの日以来やね。あんな別れ方したのにありがとう。理花がお世話になって…」

「お久しぶりです。遅くなってすみません…。」

恭吾は恵子に頭を下げる。その横を無言で陽斗は通り過ぎ、家に入って行く。

「陽斗もすごい心配しとったんよ。ちゃんと謝っときね。」

恵子は理花に優しく言うと、背中をさすりながら家の中へ連れて行く。

リビングには誠一が待っており、離れてソファーに陽斗は座っていた。
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