二人の距離~やさしい愛にふれて~
「ハハハッ、父親が聞くには耳の痛い話だが理花の言うとおり、もう何もわからない子どもじゃないけんな…恭吾君への信頼もあるけん反対はせんよ。」

誠一は苦笑いで答える。

「そうよね…それで?理花はどうだったの?幸せだった?」

恵子は目に涙をためながら優しく聞く。

「うん。幸せ…。」

理花も目に涙をため、恭吾の手をぎゅっと握りしめた。

「俺、まだまだ学生で子どもですけど、早く一人前になって理花を任せられるってなるよう頑張ります。それまで見守っててもらえませんか?もちろん、暴走したりだめなことしたときは怒って下さい。」

「いやいや、恭吾君に十分任せられると思っとるよ。学生なのは仕方ない、そこは焦らずしっかり勉強して。そんなのあっという間で今だけやけん。」

「…はい。」

恭吾は理花の手を握っている手がかすかに震えていた。

「はぁ~、なんだかもう理花がお嫁に行くみたい。子育てなんて振り返ったら一瞬やね。でももうちょっとうちの子でおらせてね。」

恵子は優しく理花を見つめながら言う。
その言葉に理花は嗚咽が漏れるほど泣き出し恭吾の胸に顔を埋める。

「理花…、まだずっと一緒ってわけにはいかないけど何かあったら一人で悩むなよ。」

理花は頷くだけでしばらく泣き続けた。

「恭吾君、今日は泊まっていくやろう?」

恵子が夕食の準備をしようと立ち上がる。

「あ~、いえ…今日は帰ります。明日も学校あるし、今日も休んだから。」

「そうか…久々にゆっくり話でもと思いよったけど平日やしな。今日も悪かったね。休ませてしまって。」

「今日は俺自身が理花といたかったんで…前のとはいえ、約束破ってすいません。絶対傷つけないし、大切にします。」
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