二人の距離~やさしい愛にふれて~
今朝洗濯ついでに掃除もしていた恭吾は風呂釜のお湯張りボタンを押した。
お湯をためている間にコンディショナーまで終わらせると、貯まりきってない浴槽に理花を座らせた。

自分の体も洗うと恭吾も一緒に浴槽に座り、後ろから理花を抱きしめた。

「はぁ~、寒かった。お前も上着くらい着て行けよ。」

「……置いてきちゃった…」

俯いたままの理花の首を見て恭吾は驚いた。
明らかに締められた痕が残っていたのだ。

「お前…本当に無理やりされたのか?この首…」

理花は力なく首を横に振った。

「……今日の人たち力強くて…このまま死んじゃうのかなって思った。そしたらね、恭ちゃんとのことが頭に浮かんだんだよ…何でだろうね…ヘヘッ」

恭吾は胸の詰まる思いがして理花を力いっぱい抱きしめた。

「もうこんなこと辞めろよ。本気でいつか殺されるぞ。」

「エヘヘッ…恭ちゃんに抱きしめてもらえると幸せ。そうするとね、死にたくなる…」

呟くようにそういうとバシャッとお湯に顔をつけた。
驚いた恭吾は慌てて理花を引き上げる。

「アハハハハ、ハハハッ……今は死なないよ。恭ちゃん…っ」

「死にたいなんて言うなよ…。」

恭吾はまた力いっぱい抱きしめるとその細い肩は震えており理花は声を殺して泣いていた。

「なぁ、なんも言わなくていいからさ、もう辞めろよ。こうしてたら幸せなんだったらこうしてたらいいじゃん。」

「恭ちゃんは優しいね。見捨てていいのに…今日ね、久しぶりにお米を食べたよ。恭ちゃんが買ってくれたおにぎり、おいしかった。でもね、体が受け付けてくれなくて吐いちゃった。ごめんなさっ…うぅっ…」
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