二人の距離~やさしい愛にふれて~
その日、理花が泣き止むと恭吾はすぐに理花の家を後にした。
駅まではまた陽斗が送ってくれ、車内ではしばらく沈黙が続く。

「さっきのは謝らんけん。お前を信頼して託したんだ…。ただ、あまりに虫のいい話だよな、理花のことありがとう、本当に助かった。」

「ははっ、もう口利いてもらえないかと思ったっす。」

恭吾の言葉に陽斗はルームミラー越しにキッと睨む。その顔を見て更に恭吾は笑顔になる。

「はぁぁ~、ムカつくけど憎めんなっ。俺だって恭吾に会いたかったんよ。弟が出来たみたいで嬉しかったけん。」

「ため息!俺もっすよ。また会えて嬉しいっす。これからも仲良くしましょっ。」

恭吾があまりに嬉しそうな顔をして言うから陽斗もバツが悪そうに笑う。
間もなくして駅に到着すると陽斗は駐車場に車を停めると恭吾と一緒にホームまで来る。

新幹線は30分後しかなく二人でホームのベンチに座る。

「正直、もうダメだと思っとったんよ。だけん未練が残らんようにきっぱり振られてくればいいって思っとった。」

「振られるって理花が俺に?」

驚いて恭吾が聞くと陽斗は頷く。

「だってあの日、あんな風に帰らせたやろ?その後連絡取れんし、怒っとるって思うやろ?」

「あ~、あの時はすいません。怒ってと言うよりかなり落ちてました…。上手くいってるって思ってたんで…。」

「病気とはいえ、あの時は本当に悪かった。」

陽斗が頭を下げるから慌てて恭吾は引き起こす。

「あれは誰も悪くないです。俺自身まだまだ子どもだって思ったし、きっと時間が必要だったんだと思うし…。辛かったけど。」
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