二人の距離~やさしい愛にふれて~
「理花がさ、自分のこと汚いって思ってるやろ?だがら恭吾は手を出さないって思ってたんよ。あのマンションで一緒にいたときもほとんど何もしなかったんやろ?汚いっていつも洗ってくれただけだったって…。」

「ははっ、そうですね。あの時の理花は苦しむためにするみたいな感じだったんで…。」

「考えたらやり場のない怒りに気がおかしくなる…。でも、だからこそ恭吾がおってくれたことが救いやと思う。……今日理花を抱いてくれて、あいつはまたお前に救われたと思う…。」

「なんすかぁ~、殴ったくせに。」

あえておちゃらけて言う恭吾の顔を真面目な顔で陽斗はまっすぐ見る。

「草野先生が理花がセックスして幸せを感じられることが目標って言ってたんだ。だけん母さんが理花に幸せだったか聞いたんよ。」

「幸せかぁ、確かに苦痛な顔はしてなかったっす。」

はりきって恭吾が言うから陽斗は肩をグーで殴った。

「あぁ~、可愛い妹のこんな話するとかめっちゃ複雑なんやぞ。」

それから新幹線の発車前までは以前のように楽しく話をした。

「気をつけて、また、来てくれよな。」

「はい、また来ます。」

恭吾はまた陽斗とこうやって話せるようになれて嬉しく、涙がこみ上げてくる。
殴られた時に自分が取った態度は生意気だったと自覚はあるが譲れない事であり引く気はなかった。だからこそ陽斗との関係は諦めていたのだ。

夜遅くに家に帰り着いた恭吾は茉莉と真に理花とこれからも付き合っていきたい事を伝えた。
二人は恭吾の左頬にうっすらとアザがあることに気づいていたがあえて何も聞かなかった。
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