二人の距離~やさしい愛にふれて~
「お前さぁ、頭おかしいんじゃね?フツーほっとくだろっ。」

由彰に向かって恭吾は言い放った。
由彰はちらりと振り返るもすぐに前を向いて足を進めた。

「はぁ、名前、リカって言うの?」

女は薄気味悪い笑みを浮かべたままで恭吾の顔を見る。

「名前必要?ブスとか、くそとか、便器とかって呼ぶ人もいるし、なんて呼んでもいいよ。」

「きたねぇな。お前あんな奴らについてって何されるかわからねぇだろ?死にてぇの?」

「殺してくれるの?わたし汚いでしょ?燃えてなくなった方が地球環境のためにもいいのよ。」

笑ってそういう女の顔を見て恭吾はゾッと冷たいものが背筋を走った。
前を歩いていた由彰が一番近くにあったホテルに入って行く。

三人は同じ部屋に入ると由彰は振り返り女の胸ぐらを掴んだ。
その表情はひどく怒っている。

「お前、簡単に殺せとか言うな。死んだ方がいい人間なんていねぇよ。生きたくても生きられなかった人もいるんだ。二度というな。」

「まぁまぁ、本気で言った訳じゃないだろ?怒るなよ。」

恭吾は由彰の手をなだめるようにポンポンと叩く。

「お前が一番…とにかく二度と言うな。」

由彰は眉間にシワを寄せながら怒っているようにも泣きそうにも見える。

「ねぇ、早くしようよ。」

女は動じる風もなく薄気味悪い笑みを浮かべたままだった。

「とにかく風呂入って洗ってこい。化粧も、その顔じゃ勃たねーよ。」

そう言うと由彰は胸ぐらを掴んだまま女をバスルームへと押し込んだ。
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