二人の距離~やさしい愛にふれて~
スマホを探している理花を横目に恭吾はキッチンへ行きおにぎりのお粥を作った。

「お粥のレトルトも置いとくから俺がいないときはちゃんと食えよ。」

理花を見ながら言うも返事は返ってこず、夢中でスマホを探しているようだった。
そんな後ろ姿さえ可愛く思え、恭吾は理花の後ろへ行き抱きしめた。

「いやっ、やだっ、やめって…」

抱きしめたとたん理花は身体を硬くし、小刻みに震えだした。
急なことで恭吾は驚き、すぐに体を離す。理花の顔をのぞき込んでみると目は合わず、視点が定まっていなかった。

「り、理花?どうしたんだ?」

恭吾の声なんてまるで聞こえていない様子の理花を見て、初めてこの家に来た時のことを思い出す。
来る途中でもいきなり震えだしたときと同じような顔をしていた。

気になっていても聞けないこと……なんでこんな生活をしているのか、なんでいきなり震えだすのか、なんで部屋の棚を倒したままなのか…。
恭吾は無理に聞き出すつもりはなかったが、どうしても気になっていた。

何度か理花の名前を呼んでみるとようやく目が合う。

「おい、大丈夫か?俺、わかる?」

恭吾の問いにうん、うんと何度か頷いた。やっと戻ってきた理花を見て安心する。
< 33 / 226 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop