二人の距離~やさしい愛にふれて~
理花は俯いて震える手で恭吾の服を掴む。

「お酒、お酒飲みたい。もう嫌。お願い。」

震えながら言う理花を見て恭吾の胸が苦しくなる。
どうやったら救えるのだろう?どうやったら…。

「理花、お粥できたからまずは食おう?」

理花の腕にそっと手を当て、優しく言う。
しばらく反応のない理花を見てもうお粥は食べないだろうと諦めていると、理花がゆっくりと顔を上げた。

「恭ちゃんがキスしてくれたら食べる。」

その言葉に一瞬驚いたが、眉尻を下げて必死な様子で恭吾の顔を見上げる理花がたまらなく愛おしかった。
ゆっくりと顔を近づけて唇を重ねると理花は恭吾の背中に手を回し、すがるように抱きついた。

何から救えばいいのか、理花の過去に何があったのか…
そんな事を考えながら聞くことができないままただ理花を抱きしめる。

唇が離れると理花は捨てられた子猫のような顔で恭吾を見つめる。

「プハッ、そんな顔で見なくても大丈夫だよ。一緒に飯食おう。理花はもっと太った方がいいよ。」

優しく笑いかける恭吾を見つめたまま理花は軽く頷いた。

一緒にご飯を食べながらも理花の心の中の不安は消えなかった。
そもそもこんな自分に何故優しくしてくれるのか理解できなかった。
今まで関係を持ってきた男性に優しくされたことがなかったし、自分自身も特定の誰かにそばにいてほしいと思った事もなかったのだ。
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