二人の距離~やさしい愛にふれて~
「ヨシ、落ち着けよ。そもそもお前が首突っ込むから…。頭やべーのわかってただろ?」

「あぁ」

由彰は不機嫌そうに恭吾を押しのけると部屋の中へ入っていく。

「アイツ、風呂で自殺したりしねーよな?」

ふと不安がよぎった恭吾がバスルームの前に行き、ドアに耳を当てて中の様子を伺う。

「自殺するなら男と遊ばずに死んでるよ。心配なら一緒に入ってきたら?」

「お前さぁ、どうすんだよっ。マジでヤるつもりなのか?」

「さぁ?ヤる気は起きねーけど、ほっとくとあの女あいつらの所に戻るだろ?」

恭吾は頭を掻きながら大きなため息をつくとバスルームへ入っていった。
脱衣場には女が着ていた服が脱ぎ捨てられており、シャワーの音が聞こえる。

「おいっ、開けるぞ。」

声をかけるが返事は無く、恭吾は恐る恐るドアを開けて中を覗いた。
女は湯気が充満したバスルームで頭からシャワーにうたれながら立ち尽くしていた。
よく見てみると女の体には所々アザがあり、足や腕には明らかに何かに縛られた痕があった。

「おいっ、大、丈夫…か?」

声をかけるも女は反応がなく宙を見つめていた。
恭吾はまたため息をつくと服を脱いで女の横に行く。

「洗ってやるから座って。」

そう言って無理やりバスタブの縁に座らせると、髪にシャンプーを付け荒々しく洗いはじめた。
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