二人の距離~やさしい愛にふれて~
「ヨシ、顔近い。」

理花が動揺しているのがわかり、恭吾は由彰の肩を引いた。

「あの時はへらへらしてたのに、随分と別人だな。」

理花はどうしてよいのかわからず俯いて恭吾の服を握りしめた。

「可愛いだろ?笑顔はもっと可愛いんだ。でも見せてやらねぇ。」

おどけてそう言うと恭吾は理花の顔を隠すように抱きしめる。

「ハハッ、俺の好みじゃねぇよ。」

「うわぁ、いいなぁ。私も恭吾みたいな彼氏がほしいぃ~。」

横で見ていた昌美が由彰の腕にまとわりついて嘆いていた。

「この前写メ見せてくれた蓮くんはどうした?」

恭吾は理花を抱きしめたままからかうように昌美と話をし始めた。
理花は楽し気に話をしている三人の中に自分がいることに罪悪感をおぼえた。
軽く恭吾の胸を押すと、腕の中から抜け出てお店の外へと出て行った。
そんな理花を横目に由彰たちと少し話をして遅れて店を出ると理花を追った。

店をでて右に曲がったのは見えていたのでそちらのほうへ行くも理花の姿は見当たらなかった。
しばらく辺りをさがすも恭吾は理花を見つけることができなかった。

理花に電話をかけてみても留守番電話のアナウンスが流れるのみで理花が出ることはなかった。
恭吾はどうして理花がいなくなってしまったのか見当もつかなかった。ただただ焦る気持ちを抱えて理花のマンションへと向かった。
だがマンションには理花は帰ってきていないようだった。
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