二人の距離~やさしい愛にふれて~
「なぁ、理花、もうやめろよ。そもそも未成年は酒のんじゃだめだろ。」

「ヘヘッ、恭ちゃんはそんなに私に構わなくてもいいよ。こんな所にいなくてキレイな世界にいたらいいのに。」

そう言って理花は笑いながら涙を流した。

理花は不安でたまらなかった。恭吾が由彰たちと仲良く話をしている姿を見てからというもの、自分のそばに縛り付けていていい相手ではないし、いつかあのキラキラした世界に帰っていく存在であると思っている。
このまま恭吾の温かい腕の中で甘えその優しさに溺れてしまったら失った時にもう残っている自分の理性さえ崩れてしまい、もう二度と立ち上がれないようなそんな恐怖さえ感じていた。
そうなる前に自分から離れてしまおうと思ったのだ。
何も感じない、そんな以前の自分に戻りたかったのだ。

でも現実は違っており、どんなに以前のようにお酒を飲んでもどこか冷静な自分が残っている。ただセックスさえしていれば胸の焼けるような感覚が治まっていたのに今では淋しさが増すような感覚さえして自分への嫌悪感が強くなっていった。

いっそこのまま死んでしまえたらとさえ思うようになっていった。

その日もいつものように昼間は恭吾を部屋で待っていた理花は時計を眺めるのが辛くなり自分には似合わないワンピースにコートを羽織ると外へと出て行った。
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