二人の距離~やさしい愛にふれて~
「これ、理花に渡してもらえませんか?」

「これは預かる。だが先ほどのご両親の様子を見ただろ?受け取って貰えるかはわからないよ。」

「はい…」

恭吾の心は疲れきっており力なく握りしめていたぬいぐるみを渡部に渡した。

「君は一応容疑者なんだ。でもこのきれいな手を見て安心したよ。人をあれだけ殴ったら自分の手も負傷してるだろうからね。」

恭吾は目を見ひらいて渡部を見る。

「だから人殺しって言われたのか…」

悔しさや切なさが一気にこみ上げてきた恭吾の目からは涙が流れ落ちた。

通路からは誰か走ってきている足音が聞こえる。
その音は徐々に近付いてきて顔をあげると白衣姿の茉莉だった。

「恭吾…」

大きくなってからは泣くことがなくなった恭吾の涙を見て茉莉の胸は締め付けられた。

「もう…来ちゃだめって言われなかった?」

茉莉の目からも涙が溢れ、座っている恭吾の頭をぎゅーっと抱きしめた。

「恭吾、今は理花さんに会うのはあきらめよう。また落ち着いて会える日があるかもしれない…うぅっ…この子は見た目はこんなですけど本当に優しい子なんです。人様にあんな酷いことができる子じゃない…」

真から恭吾も容疑者の一人だと聞かされていた茉莉は涙ながらに渡部に訴える。
渡部はその場に立ち上がり、真っ直ぐに茉莉を見る。
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