二人の距離~やさしい愛にふれて~
恭吾は自分が思っている以上の緊張や、理花に対する複雑な感情などで鼓動が速くなり、額から汗が流れた。
森永は近くにあったティッシュを何枚か取り恭吾に手渡す。

「ありがとうございます。」

「ヤッてきたんだろうって具体的には?」

「・・・・・・・・・・・」

恭吾は受け取ったティッシュで額を拭きながら森永の質問に言葉が詰まる。
こんなに勝手に理花のことをすべて話してしまっていいのだろうか?理花がかわいそうだと思った。
由彰が理花は自業自得だと言っていたが恭吾はそうは思っていなかったのだ。本当に理花が悪いのか?もちろんそんなひどいことをした犯人が一番悪いのだが、理花の行動を止められなかった自分にも非があるのではないか、両親がいてあんなに泣き叫び落胆しているのになぜ今まで放っておいたのか、など恭吾の頭の中でごちゃ混ぜになっていた。

「答えづらい質問だったね。彼女を見て何かの形跡があったということかな?」

恭吾は俯いたまま頷いた。

「・・・・・・・・縛られた跡とか…体にアザとか…服や髪には…その…男たちの…」

最後まで言えずに恭吾は俯いたまま口を閉じてしまった。

「そうか、もともとそういう兆候はあったんだな。」

「…はい。なんで理花があんな事を繰り返したのか、何にそんなに苦しんでるのか分からないんです。でもそばにいたらいつか救ってやれるんじゃないかって俺…。」
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